セクレタリーではなく通訳

 なんのこっちゃだが、今日は先週のセクレタリーの仕事ではなく、通常の通訳の仕事だった。

 今日の仕事は地元にある某大手自動車部品メーカーでの通訳であった。私の住む愛知県はトヨタ(地元では自工と言う)をはじめ自動車関連企業が数多くある。そして、これらの企業にはたいていタイに現地法人があるため、タイから定期的(あるいは不定期的)に研修生が日本にやってくる。そうしたことから、これまでにも様々な自動車関連メーカーで研修通訳の仕事をしてきた。
 今日通訳の仕事をした企業も同様で、この企業には毎年タイの研修生がこの時期にやってくる。研修自体は数ヶ月と長期に及ぶのだが、さすがに企業のほうも毎日通訳を雇うだけの予算はないので、私もスポット的に通訳の仕事に入ることになる。これはちょっとした裏話になるが、実際には日本の会社としてはもう少し通訳を雇う日数を増やしたいところだが、通訳の費用を負担するのは日本の会社ではなくタイの現地法人なので、そのあたりもなかなか難しいようである。

 これはいつも思うことだが、研修生がわざわざ日本に学びに来る内容というのは普通は新しい技術であり、研修の内容自体は当然専門的な内容になるので、そうした内容を日本語だけで教え学ぶというのは無理がある*1。逆にそういうやり方で何とか研修が成立しているのは、研修生自体にその内容に関する基本的な知識と技能があるのと、実際のラインで実際の機械を使って行なう研修では、例えば、操作の手順などはある程度は言葉を使わなくても理解することができるためであると思う。とは言ってもやはり、座学(室内)の研修になると言葉や文字を解さなくては正確な理解は難しいであろう(図や絵を書くということも一つの助けにはなるがそれにも限界がある)。そして、実のところ、一番重要なのは機械の操作の仕方そのものを覚えることではなく、その理屈や理由、目的を理解することであり、そうした部分の理解には言葉が必要不可欠となる。そんなわけで、日本に研修に来るタイ人は多かれ少なかれ言語の面でかなり大変な思いをしているはずである。

 一方、通訳者である私の立場から言うと、今回の研修内容は過去にも通訳したことのある内容なので、私にとってはそれほど難しくはないのだが、ただ、いつも書いているように私の仕事の大半は翻訳であり、逆に通訳の仕事はかなり間隔が空くので、技術用語でもわりと何気ない言葉が出てこないことが時折あるのが困ったところである(要は使わない言葉は忘れるということである)。今日なども例えば「油圧」という言葉が出てきたが、これは前日の準備で確認しておいたので問題なかったものの、もし事前に確認していなかったらぱっと出てこなかったかもしれない。

 いずれにしても、セクレタリーの仕事を終えた直後の仕事だったので、やはり通訳の仕事はセクレタリーの仕事とはまったく違うなあとあらためて実感した(やはり通訳の仕事のほうが疲れる)。

*1:研修に来るタイ人はタイにいる時も会社で日本語を何ヶ月か勉強し、日本に来てからも最初の1ヶ月ぐらいは日本語の勉強もするので多少は日本語を解するのだが、それにしても専門的な内容を理解できるレベルではない。