この料理は辛すぎて私は食べられません。

 英語の勉強に使っている本に上のような日本語が載っていた。

 この本は、英語のスピーキング力の向上を目的にした本で、上のような日本語を見て、それを瞬時に英語になおすもので、私は上の日本語を見て、次のような英語になおした(実際には発音するのだが)。


 “This food is too hot for me to eat.”


 これはいわゆる“too〜to…”で、それはいいのだが、テキストには次のような英語が書かれていた。


 “This dish is too spicy for me to eat.”


 ここでは、「辛い」という言葉を“spicy”としたほうがいいのか、それとも“hot”としたほうがいいのかについては、ひとまず置いておくことにする。

 問題は私が「料理」という言葉を“food”としたことである。その一番の原因はもちろん私の英語(表現)力の欠如であるが、ここで私が感じたのは、こういう訳し方がいわゆる素人的な翻訳だということである。

 つまり、単純に「料理」という言葉だけであれば、“food”でもおかしくない場合はあると思うが、この文章ではやはりおかしいのである。というのは、ここでいう「この料理」というのは、例えば、何種類かある料理のうちの一品(一皿)と考えるのが自然なわけであり、そう考えるとやはり“food”ではなく“dish”になる。逆に、私は「料理」という字面だけを見て何も考えずに“food”と、それこそ瞬間的にしてしまったわけだが、それがまさに素人的な翻訳(文章における言葉の意味合いを考えず、字面だけを見て英語に置き換える翻訳)そのものだったわけである。

 なお、タイ料理をよく知っているものから見ると、逆に今度は字面ではなく、文章における言葉の意味合いを考えると、上の日本語の「辛すぎて」はやはり“spicy”ではなく“hot”のほうが近いのではないかということになる。