英語から訳した日本語とタイ語

 来週からの仕事の準備のため、日本語とタイ語の情報をネットで調べていたら、偶然同じような内容のページを見つけた。そして、日本語とタイ語のページをそれぞれ読みながら、語彙などを確認していたのだが、そのうちあることに気が付いた。
 翻訳の仕事でタイ語の文書を読んでいると、一読しただけではさっと頭に入ってこない文章に出くわすことが時々あるのだが、先のタイ語のサイトのページを読んでいて、まさにそういう類の文章があることに気が付いたのである。

 なるほど。翻訳の仕事の時に一読してさっと頭に入ってこない文章は、こういう文章なんだなとあらためて納得した。論より証拠なので実際に私がそう思った文章を例としてあげてみる。

“เนื่องจากมิได้กำหนดความแตกต่างในเรื่องลักษณะทั่วไป ความเร็ว และวิถีวิ่งของลูก อาจมีการเปลี่ยนแปลงคุณลักษณะดังกล่าวข้างต้นได้โดยการอนุมัติจากองค์กรแห่งชาติที่เกี่ยวข้อง ในที่ซึ่งสภาพความกดอากาศสูงหรือสภาพดินฟ้าอากาศเป็นเหตุให้ลูกขนไก่ตามมาตรฐานที่กำหนดไว้ไม่เหมาะสม”


 この文章を読んですぐに「これだ」と思った。翻訳の仕事でこの手の文章が出てくるといつも決まって頭を悩ませる。そう、これは英語から翻訳した文章なのである。元の英語を探すのに随分苦労したが、ようやくこのタイ語文に該当する英語を見つけた。以下の文章である。


“Subject to there being no variation in the general design, speed and flight of the shuttle, modifications in the above specifications may be made with the approval of the Member Association concerned, in places where atmospheric conditions due to either altitude or climate make the standard shuttle unsuitable.”


 この英語の文章を読んでからあらためて上のタイ語の文章を読んでみると、思いっきり英語の直訳だということが分かる(しかも私が読む限りでは訳そのものがおかしい)。私は英語に関してはタイ語と比べてまだ能力が低いので、この英語の文章自体が分かりやすいかどうかはいまひとつ分からないが、少なくとも、この文章を明確に意味が分かるように別の言語に訳そうと思ったらある程度は頭をひねる必要があるだろう。逆に、英語から翻訳した文章であっても、元の英語が“The shuttle shall have 16 feathers fixed in the base.”といった程度の単純な文章であれば、翻訳したタイ語なり日本語が分かりにくい文章になることはあまりない。だが、上のタイ語などを読むと、肝心の文章の「内容」がうまく翻訳できていないように思われる(というか、そもそも原文の意味を正しく理解できていないのではないかと思われる)。そしてその結果、この文章を読んだ人間が悩むことになる。上のようなタイ語の文章だと、タイ人が読んでもおそらくさっとは頭に入ってこないのではないか。もしこのタイ語を日本語に翻訳しなきゃいけなかったらなどと想像するだけで気分がずしりと重くなってくる。

 ちなみに、同じ内容の日本語の文章は以下の通りである。


「一般的な形状やスピードやフライトに特に変わりがなければ、高度または気候のために大気の状態が規定のシャトルでは不適切である場合に限り、(財)日本バドミントン協会(以下「本会」と言う)の承認のもとに上記の細則を変更してもよい。」


 多少は翻訳臭を感じさせる表現がないでもないが(例えば、「承認のもとに」など)、このレベルの文章であれば十分に理解することができる。理解できるのは私が日本語を母語とする日本人だからだけではない。逆に、日本語の翻訳文が上のタイ語のような文章で、タイ語の翻訳文がこの日本語のような文章であれば、きっとタイ語の文章のほうが理解しやすいはずなのである。

 というわけで、タイ語と日本語の翻訳の仕事をしていてもやはり英語からは逃れられないなあとあらためて感じた次第である。