日本語から外国語への翻訳の難しさ

私がやっている翻訳は大半がタイ語(外国語)から日本語への翻訳ですが、日本語からタイ語(外国語)への翻訳もやっています。

 

 ただ、日本語からタイ語への翻訳は本当はあまり積極的にはやりたいと思っていません。本来は日本語の理解力があるタイ人が翻訳するのが望ましいと思っています(逆を考えてみれば分かります)。なぜ、積極的にはやりたくないかと言うと、翻訳をしている時に「精神的につらく苦しい」からです。では、どうして精神的につらく苦しいかと考えると、その答えはつまるところ「表現力」に行き着きます。

 

私がタイ語を本格的に勉強し始めたのは27歳の時です。それから6年ほどタイで暮らしましたが、子供の頃にタイに住んでいたこともなければ、学生時代に留学したこともありません。したがって、どうがんばってもタイ語の表現力においてはネイティブにはかないません。それこそ、原文を読んで描いたイメージを訳文で表現するには、その肝心の表現力が足りないということです。これは、率直に言って、ある外国語を母語としない翻訳者であれば誰しも当てはまることだと思います。

 

それでも、私が日本語からタイ語への翻訳を引き受けているのは、原文のイメージを訳文で完璧には表現できなくても、原文の情報をできる限り正確に訳文で再現することは何とか可能だと考えるからです。ですから、ある外国語を母語とする外国人に何らかの「情報」を伝えることを目的とする文書であれば引き受けてもよいと考えていますが、小説や詩のように、単なる情報だけではなく、その内容が表すニュアンスや世界観も表現しなければならないような文章は引き受けられませんし、その言語を母語としない私にはそもそも翻訳すること自体が限りなく不可能に近いと思います。

 

ですから、翻訳をしている時の「精神的なつらさや苦しさ」というのは、100%は思ったような表現ができないつらさや苦しさであると思います。

 

ついでに書いておきますと、外国語(タイ語)で何か自分の考えを表現する場合は、自分の表現力(語彙力)の範囲内で表現すればよいので、日本語を外国語に翻訳する場合とは全く状況が異なります。

 

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