原文から離れた訳文

原文に忠実に訳そうとすると、結果的に原文の文章構造や原文の字面から離れることが少なくないのは、原文である外国語と日本語の文法や文章構造上の違いが大きい場合です。

 

私の場合ですとタイ語と日本語ということになりますが、タイ語と日本語はかなり文法や文章構造が異なります。ですから、タイ語の文章構造で書かれたものをその文章構造のまま日本語に訳すことはほとんどできませんので、結果的に日本語の訳文はタイ語の原文から離れたものとなります。

 

具体的な違いをあげれば、まずタイ語と日本語では語順が大きく異なります。ごく短い文章であれば語順の違いはさほど大きな問題ではありませんが、実際に翻訳する文書は1つの文章が非常に長いものも少なくありません。そうすると、語順というのは情報を伝える上においても非常に重要な役割を果たします。タイ語だとこういう語順になっているけれど、その意味内容を日本語で伝える場合にはどのような語順にするのが一番よいのかと考えることはある意味で難解なパズルをするようなものです。ですから、タイ語の1つの文章が非常に長くても、それを明確に理解できていないと、つまり、文章の論理や筋道がはっきりと見えていないと、いざ日本語にしようとした時に頭の中で混乱してしまい、うまく訳せません。これは通訳でも同じことが言えると私は思っています。

 

また、これも語順に関わることですが、タイ語という言葉は、英語でいう関係代名詞や接続詞で長々と文章が続くことが少なくなく、その複雑につながっている一つの文章をこんがらがらないよううまく解きほぐした上で、その意味内容を日本語という別の言語で再構築するという作業を行うことは簡単なことではありません。また、今は1つの文章だけに焦点を当てて話していますが、実際の翻訳の作業では「文脈」によって訳文も変わってきますので、前後の文章や文書全体の内容も踏まえた上で翻訳しなければなりません。

 

そのようなことを考えていくと、一口に翻訳すると言っても、そのプロセスではいくつもの要素を考慮して翻訳しないといけないことが分かります。

 

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