原文を明確に正しく理解できれば原文から離れられる

8月21日のブログで私は「翻訳において大切なことは色々ありますが、最も大切なことは「原文の理解」だと考えます」と書きました。

 

原文(外国語)を明確に正しく理解できたら、次の段階は、その明確に正しく理解できた内容を訳文(日本語)で表現することですが、原文を明確に正しく理解できると、訳文で表現する段階でそうでない場合と比べて何か一番違うのか。

 

それは、「どれだけ原文から離れられるか」だと私は思います。よく、「原文に忠実に訳す」ということが言われますが、「原文に忠実に訳す」とはどういう事なのでしょうか。私は、「原文に忠実に訳す」とは、原文に書かれている内容とそれを訳文で表現した内容が「等価」であることだと思います。もう少し違う言い方をすると、例えば、タイ語の原文を読んだタイ人と日本語の訳文を読んだ日本人がその意味内容において全く同じ情報を得られることです。

 

重要なのはその文章を読んだ人が得られる「意味内容」であり、文章そのものの「表面上の形」は問題ではありません。逆に言うと、「原文に忠実に訳す」というのは、原文通りの文章構造で訳すことでもなければ、原文の字面通りに訳すことでもありません。

 

私は人に偉そうなことが言えるほどの翻訳者ではありませんが、これまでの経験上言えることは、原文に忠実に訳そうとすると、結果的に原文の文章構造や原文の字面から離れることが少なくありません。そして、原文を明確に正しく理解できていればいるほど、訳文から思いきって離れることができます。逆に言うと、原文の理解にあいまいなところがあると、訳文から思いきって離れられません。そうすると、いくら時間をかけても「原文の理解」という第1段階に問題があるため、原文と訳文が「等価」の内容にならず、「原文に忠実な訳文」にはなりません。

 

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