何気なく使っている言葉に目を留める時

「現地工場」という言葉があります。この一見すると何の変哲もなさそうな言葉を訳そうと思った時、パソコンを打っている手が止まりました。

 

この言葉、分かる人には分かると思うのですが、日本の企業が外国に建設した自社の工場のことを指します。例えば、こういう文脈です。

 

コロナウイルスの流行により操業を停止していたトヨタの現地工場が明日13日から操業を再開すると発表」

 

ちなみに、これは私が作った架空の文章です。おそらく実際の文章では、こういった文章の前後に国の名前が出てくる場合が多いので、これが外国にある工場であることが分かります。

 

さて、今回私が実際の作業で目にした文章には国名は書かれておらず、単に「現地工場」としか書かれていませんでしたが、これを書いた人はほぼ100%間違いなく「外国にあるその会社の工場」のことを念頭に置いて書いているはずです。しかしながら、この「現地工場」というのは、あくまで日本企業あるいは日本人の視点で書かれた言葉です。ですから、この「現地工場」という言葉をタイ語にそのまま訳したとしても、そのタイ語訳を読んだタイ人には正しい意味が伝わらない可能性が高いです。

 

この場合、「現地工場」という言葉そのものには明示されていなくても、「外国にある」という意味が含まれているので、タイ語(またはその他の外国語)に訳す際には、「外国にある」という情報も含めて訳す必要があります。日本人の視点で書かれた日本語、あるいは、ある組織や業界にいる人によって書かれた日本語を読んでいると、こういった言葉そのものには明示されていない意味が含まれている言葉がことのほか多く、何気なく読んでいる時にはこういった明示されていない意味のことはあまり意識しませんが、いざ翻訳しようとすると、つまり、その文章の意味をできる限り正しく理解しようとすると、こういった明示されていない意味に気が付きます。

 

なお、蛇足になりますが、上述の「現地工場」が文脈から「タイにある工場」であることが明らかである場合、タイ語に訳す時には当然「外国にある」ではなく「タイにある」と訳さなければなりません。

 

このようにどういった視点で書かれている文章なのかを考えて読むことが、特に翻訳をする場合には大切になってきます。

 

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