通訳のために翻訳を断るというジレンマ

 ここのところ、通訳の仕事のせいで翻訳の仕事を断るというケースがけっこうある。

 翻訳を生業としているはずの私としてはこれは非常によろしくないことである。中でも特によろしくないケースが2つある。
 1つは、今まで一度も仕事を受けたことのない会社から仕事の依頼が来るケースである。この初めての依頼が今後の依頼へとつながる可能性があるからであり、たとえ依頼された仕事が小さな仕事であったとしても、その機会を逃すことはあまりよろしくない。

 もう1つは、ページ数が非常に多いいわゆる大型案件の依頼である。そもそも、1ヶ月2ヶ月と続く通訳の仕事を引き受けた時点で大型案件を引き受けることはほぼ不可能に近く、ある意味で自業自得ではあるが、さりとて、来るかどうかも分からぬ大型案件のために通訳の依頼を断ることは現実の収入を考えると難しい。

 今回は上の2つのケースが両方ともあったのだが、中でも残念なのはやはり大型案件を、それも2つも逃したことである。特にそのうちの1つは通訳の仕事さえなければ何としてでも引き受けたい仕事だっただけに、まさに泣く泣く仕事の依頼をお断りした。

 というわけで、今はそれほど量の多くない翻訳を可能な範囲で引き受けているが、それにしても、週5日通訳の仕事をやりながら同時に翻訳の仕事も引き受けるというのは肉体的にも精神的にもなかなかしんどいものがある。