いまだ定まらぬ道

 おかげさまで今年はこれまでのところ、かなり忙しく仕事をやらせていただいている。もちろん、フリーランスの仕事というのは一寸先は闇なので、年の後半はガクッと仕事が減るということも十分に考えられるが*1、それこそ、地震やら津波やら原発の事故やらで大変な状況にある人たちのことを考えれば、忙しく仕事させていただけるだけでありがたいし、仕事もなかなかできない状況にある人が多いだろうから、日本全体のことを考えれば、仕事をできる状況にある人間は仕事をしっかりやることが一番なのだと自分では思っている。
 そういうわけで、今は余計なことを考えずに依頼される仕事を一つひとつ丁寧にやっていけばいいのだが、タイ語の翻訳・通訳の仕事を始めてもう9年近くになろうというのに、今もって「こういう方向で仕事を続けていく」という確固たる道が定まらず、どういう方向で行けばいいのかと惑っているのが現実である。

 惑っている方向性は大きく分けて2つ、いや3つある。

 1つ目は、翻訳か通訳かという方向性である。「タイ語翻訳を生業とする」とブログで謳っているにもかかわらず、この2つの道で惑っている。特にここ1年ほどは仕事に占める通訳の割合が増えてきており、翻訳が完全に主であると言えない状況にまでなりつつある。以前、翻訳と通訳というのは似て非なる仕事であり、この2つの仕事を高いレベルで両立するのは難しいと書いたことがあり、今でもその通りだと思っているが、以前とは少し考え方が変わってきており、現実に通訳の依頼がある以上、できる範囲で翻訳と通訳を両立していけばいいと考えるようになった。ただし、この先もずっとそうやって仕事をしていくのかと言うとそうとは思えないので、とりあえず当面はそのようにやっていくといったところになるだろうか。いずれにしても、通訳の仕事が増えているので、今後しばらくは今まで以上に通訳の技術を磨くことに比重をおきたいと考えている。

 2つ目は、翻訳そのものの方向性であり、これが現在もっとも悩んでいるところである。一言で言うと、「どういう翻訳をしていくべきなのか」ということになる。上述のように私はタイ語の翻訳の仕事を9年近くやってきたのだが、これまでに翻訳してきた分野は非常に多岐にわたり、自分で言うのもなんだが、たいがいの分野の文書の翻訳には対応できる。ただしそれはたいがいの分野のことはよく知っているという意味ではもちろんなく、むしろ知識で言えば、それほどよく知らない分野の文書を翻訳することのほうが多いのである。もちろん、仕事の依頼を受けた段階で、対応できると判断するからこそ仕事を引き受けるのだが、それほどよく知らない分野の文書を翻訳することは、いろいろな意味で作業としてはつらいものになり、自分はこのような仕事を一生続けていくべきなのかと自問自答することもしばしばである。ただし、現実としては、分野を絞って仕事を引き受けられるほどタイ語翻訳の市場は大きなものではないし、そもそも、この分野に絞ってやっていくと言えるものがないのが、何よりも問題である。そして、悩みは分野だけの問題にとどまらず、他にも2点ほど思案していることがある。

*1:震災で産業界にもかなりの影響が出ているので、今後翻訳の仕事は減るのではないかと予想(覚悟)はしている。