タイから日本へ(その三)

 在留資格認定証明書の有効期限日が刻一刻と近づいていたが、それでもぼくはどうすべきか決めかねていた。やはりぼく個人としては自分の仕事のことがあるのでどうしても決断できなかったのである。それでも、最終的には日本に戻ることに決めた。そう決めたのには様々な理由があるが、一番大きな理由は、今回せったく取れたこの証明書を使わなければ次に申請した時に交付してもらえないかもしれないと考えたからである。また、なぜかよく分からないのだが、今回妻が取得した在留資格認定証明書は在留期間が「3年」であった。というのも、ぼくが知っている限りでは普通はたいてい1年なのである。このことも日本へ戻ることを決めた理由のひとつである。つまり、せっかく3年のビザが取れるチャンスなのにそれを使わないのはもったいないし、次に申請した時に同じように3年がもらえるとは限らないからである。

 ということで、日本に戻ることを決めたはいいが、実はもうすでに有効期限の5月半ばまであまり日数がない状態で、有効期限日までに日本に戻るのはすでに難しい状況であった。しかし、いろいろと情報を集めるうちに、有効期限日を過ぎていても「おそらく」日本への入国は許可されるであろうということが分かってきたので、バンコク日本大使館で日本のビザを申請した。ちなみにビザを申請したのは有効期限日ぎりぎりであったが、ビザのほうは何とか取ることができた。ちなみにビザ自体の有効期限も90日以内なので、8月の半ば頃までには日本に入国しないといけない状況であった。そこで、多少余裕をみて7月の終わりに日本に戻ることにした。

 とは言っても、この時点では妻の日本への入国が許可されるのかどうかまだ分からない状況であった。万一、空港で入国を拒否されたりしたらとんでもないことになる。「おそらく」入国は許可されるであろうということは分かっても、やはり「おそらく」ではあまりにも心もとない。何とか「まず間違いなく」入国できるという情報がほしい。そこで、ぼくは日本の空港にある入国管理局の支局に電話で問い合わせてみた。そして、在留資格認定証明書の有効期限について聞いてみたところ、日本から戸籍謄本を取り寄せて、入国の際にそれを見せれば問題ないはずであるという答えが返ってきた。しかもこの時対応してくれた職員は非常に親切な方で、「入国の際、私の名前を税関の職員に言えば大丈夫」とまで言ってくれた。ここまで言ってもらえれば「まず間違いなく」入国できるはずである。ただし、「入国審査の際に別室で1時間ほど話をすることにはなる」とも言われた。証明書の有効期限は過ぎているのだからこれは仕方のないことである。いずれにしても、これでかなり安心することができた。

 そして、7月の終わりになり、正確に言うと7月29日になり、ぼくたちはいよいよ日本へ行くことになった(ぼくひとりではないので「戻る」とは書けない)。上述のように日本の空港の入国管理局に電話したので、まず問題はないはずだが、実は電話してからかなり時間が経っていたので、念のために29日の朝にもう一度空港の入国管理局に電話をした。ところが、いざ電話してみると、前回対応してくれた職員がこの日は管理局に来ていないことが分かったので、電話に出た職員に、以前空港の入国管理局に電話して、その時○○さんと話をしたということを伝え、本日日本に行くのでよろしくお願いしますと言っておいた。

 これでまず大丈夫なはずではあるが、やはり実際に入国するまでは不安である。いざ日本の空港に到着し、妻とともに入国審査のブースに向かった。ところが、いざ入国審査を受けてみると、別室での審査どころか、日本の親からわざわざタイに送ってもらった戸籍謄本すら見せることなく、あっさり入国のスタンプがもらえてしまった。これにはかなり拍子抜けしたが、おそらくこれは、当日の朝ぼくが空港の入国管理局に電話しておいたので、ぼくたちが日本に来ることを入国管理局はすでに知っていたし、その前にもぼくが入国管理局に電話して事情を話していたので、入国管理局の方でうちの妻の入国を許可することをあらかじめ決めていたのではないかとぼくは思っている。

 そんなわけで、2000年の8月4日からタイに住み始めたぼくは2006年の7月29日に「いったん」日本に戻ることとなった。



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