Hの話 その2

 では、前回のつづきである。

 หมอ

 「」を取ると「มอ」となり「mOO(モー)」と読める。これに「h」が付くので「hmOO(モー)」となる。声調は「มอ」だと、低子音で声調記号がないので、第1声調(−)である。それに対して「หมอ」の場合は、高子音で声調記号がないので、第5声調(∨)である。ちなみに「หมอ」とは、病気になったりケガをしたりした時に体の具合を見てくれたり治療してくれたりする人である。

 หมอก

 「」を取ると「มอก」となり「mOOk(モーク)」と読める。これに「h」が付くので「hmOOk(モーク)」となる。声調は「มอก」だと、低子音で声調記号がなく末子音が「k」の音で、この単語は長母音(超ボイン)なので第3声調(∧)になる。それに対して「หมอก」の場合は、高子音で声調記号がなく末子音が「k」の音なので、第2声調(\)である。この言葉はそれほど頻繁に耳にする言葉ではないが、というか日常生活でこの言葉が使われることはあまりないが、天気予報などでは耳にする言葉である。それから、例えば高地に住んでいればこの言葉を使う機会が平地の人よりも多いかもしれない。たしかタイのどこその県がこれで有名だったけど忘れた。雨上がりなどにたまに見られる白いヤツである。

 หมอน

 「」を取ると「มอน」となり「mOOn(モーン)」と読める。これに「h」が付くので「hmOOn(モーン)」となる。声調は「มอน」だと、低子音で声調記号がなく末子音が「n」の音なので第1声調(−)である。それに対して「หมอน」の場合は、高子音で声調記号がなく末子音が「n」の音なので、第5声調(∨)である。寝る時にたいていの人はこれを使っているはず(使わないという人もいるかもしれないが非常に少数派であろう)。中にはホテルなどに泊まった時も自分用のヤツじゃないと眠れないなんていう人もいる。タイでは比較的安価なもの(200バーツ程度)だと大きめでふかふかのヤツが売っているがぼくはああいうのは柔らか過ぎてあまり好きではない。で、もうちょっとお金を出せばゴム製の硬いヤツが買えるのでぼくはそれを使っていた。

 หยุด

 「」を取ると「ยุด」となり「yut(ユット)」と読める。これに「h」が付くので「hyut(ユット)」である。声調は「ยุด」だと、低子音で声調記号がなく末子音が「t」の音で、この単語は短母音なので第4声調(/)になる。それに対して「หยุด」の場合は、高子音で声調記号がなく末子音が「t」の音なので、第2声調(\)である。道路標識にこの言葉が書かれているヤツがあって、それがあるところでは一旦停止しなければならない、車は。

 เหล็ก

 「」を取ると「เล็ก」となり「lek(レック)」と読める。これに「h」が付くので「hlek(レック)」である。声調は「เล็ก」だと、低子音で声調記号がなく末子音が「k」の音で、この単語は子音に短母音化の記号が付いており短母音なので、第4声調(/)である。それに対して「เหล็ก」の場合は、高子音で声調記号がなく末子音が「k」の音なので、第2声調(\)である。『ターミネーター』っていう映画があるが、あの映画はタイ語だと「คนเหล็ก(khon hlek)」(「คน」は「人」の意味)というタイトルで、まあ直訳すれば「鉄人」である。このあたりの感覚がタイ人理解のきっかけになるかもしれない。ついでに言っておくと「」を取った「เล็ก」は以前の日記で紹介している単語である。

 เหรียญ

 「」を取ると「เรียญ」となり「rian(リアン)*1」と読める。これに「h」が付くので「hrian(リアン)」となる。声調は「เรียญ」だと、低子音で声調記号がなく末子音が「n」の音なので、第1声調(−)である。それに対して「เหรียญ」の場合は、高子音で声調記号がなく末子音が「n」の音なので、第5声調(∨)である。日本の場合は1円、5円、10円、50円、100円、500円がこれにあたるが、タイだと25サターン、50サターン、1バーツ、2バーツ、5バーツ、10バーツがこれにあたる。ちなみにタイでは、オリンピックとかアジア大会の試合をテレビで見ているとこの言葉を頻繁に耳にする。2004年のアテネ・オリンピックではタイの女子重量挙げの選手がこれを(たしか)4つぐらい取ってタイではこの競技が一躍有名になった。特に金色のヤツを取った選手はオリンピックの後にCMに出たりもして、この人がバーベルを持ち上げる前に気合を入れるために発した「สู้เว้ย!(スーウォーイ!:やったるぜウォラ!)」という言葉は、日本で言えば流行語大賞に選ばれるぐらいの大流行であった。

 หวัด

 「」を取ると「วัด」となり「wat(ワット)」と読める。これに「h」が付くので「hwat(ワット)」である。声調は「วัด」だと、低子音で声調記号がなく末子音が「t」の音で、この単語は短母音なので、第4声調(/)である。それに対して「หวัด」の場合は、高子音で声調記号がなく末子音が「t」の音なので、第2声調(\)である。この「หวัด」というのは病気の症状のひとつで、くしゃみが出たり熱が出たりするアレのことである。ちなみに「」を取った「วัด」とはタイの至るところで見られる金ピカピンのあの建物で、有名どころでは「ワット・プラケーオ」や「ワット・ポー」などがある。そう今書いた「ワット」というのが何を隠そう「วัด」のことである。

 そんなわけで、子音の前に「」が付くと高子音になっちゃうということがこれで分かったわけだが、実を言うとこの「」というのは23字あるすべての子音に付くわけではない。これはタイ語が読める人でも意外と意識していない点ではないかと思う。それについては次回の日記でお話しよう。(なんてエラソウに)

*1:」は末子音では「」と同じ「n」の音になる