Hの話
やはりこの話はしておかなければならないだろう。
タイ語でHの話とは何事かと思われるかもしれないがよく考えていただきたい。タイ語の子音で「H」にあたるのは何であったか。
そう。「ห」である。今日ぼくがしたいのは「H」ではなく「ห」の話なのである。
なぜ「H」ならぬ「ห」の話をしておかなければならないかと言うと、タイ語の「ห」には通常の子音文字としての役割以外に重要な役割があるからであり、このブログではまだそれは紹介していない。ただ、そもそもこのブログは翻訳の話をしようと書き始めたものであって決してタイ語のレクチャーをしようなどと畑違いのことは考えていなかったのだが、思わず話がこういう方向に進んでしまったので責任を感じて最低限のことは書くことにしたのである。
さて、その「ห」の役割なのだが、簡単に言うと「低子音を高子音にしちゃう」という役割があるのである。
と書いても知らない人にはやはり訳が分からないことなので、いつものとおり論より証拠で例をあげてみることにしよう。
หงาย
さて、これは何と読むだろう。当然読めないのである、「ห」の役割をまだ知らない人には。それを今から説明したいと思う。まず声調はひとまず置いといて、読み方自体は「งาย」と同じである。これは読めると思う。そう。「ngaai(ンガーイ)*1」である。ただし、「งาย」と「หงาย」では決定的に異なる点がひとつある。「声調が違う」のである。じゃあどう違うのか。ここでもう一度思い出してほしい(というか少し上の文章を読み直してほしい)。「ห」の役割とは何であったか。ぼくはこう書いた。「低子音を高子音にしちゃう」と。そこでもう一度「งาย」を見てみると「ง」は「低子音」である。ところが「ง」に「ห」がつくと、つまり「หง」という形になると、もともと低子音であった「ง」が「高子音」になっちゃうのだ。なんでえどうしてえとは聞かないでほしい。ぼくだってなんでえと聞きたいぐらいなのだ。まあそういうルールだということで無理矢理自分を納得させてほしい。ということは、「งาย」では「第1声調(−)」であったものが「หงาย」になると「第5声調(∨)」になるというわけである。なお、このブログでは「หงาย」は「hngaai」と表記することにする。ちなみに「หงาย」というのはいわゆる動詞というやつで、みなさんも寝る時に毎日しているであろう動作である。
では、「ห」の役割も分かったところでさらにいくつか例をみてみよう。
หญิง
まず「ห」を取って考えてみると「ญิง」だから読み方は「ying(イン)*2」である。これに「h」が付くので「hying(イン)」となる。ちなみに声調は「ญิง」だと「低子音」で声調記号がなく末子音が「ng」の音なので(つまり「k、t、p」の音ではないので)、第1声調となる。それに対して「หญิง」の場合は、「高子音」で声調記号がなく末子音が「ng」の音なので、第5声調である。別の言い方をすれば、低子音で第1声調になる時は高子音では第5声調となる。ちなみに意味は「ぼくと反対の性の人」*3である。
หนวด
「ห」を取ると「นวด」となり「nuat(ヌアット)」と読める。これに「h」が付くので「hnuat(ヌアット)」となる。声調は「นวด」だと、低子音で声調記号がなく末子音が「t」の音なので、この場合は母音(ボイン)が長母音(超ボイン)なのか短母音(単なるボイン)なのかが問題となる。このボインは「挟まれボイン」で長母音(超ボイン)なので第3声調(∧)になる。それに対して「หนวด」の場合は、高子音で声調記号がなく末子音が「t」の音なので、第2声調である。覚えていらっしゃるかどうか分からないが中子音と高子音の場合は母音の長短は関係なく、あくまで声調記号と末子音の種類のみが声調を決める要素となる。ちなみに「หนวด」というのは男だったらたいてい生えているもので、ぼくはこれが濃いので毎日のように剃らなければならない、外に出かける時は。でも引きこもりであまり家から出ないのでついつい不精してしまう。それから「ห」を取った「นวด」にも実はちゃんと意味がある。体が疲労しているときや凝っている時にこれをやってもらうと体がすっきりする。ただし、下手な人にやってもらうとすっきりするどころかかえって痛くなって次の日に揉み返しという状態が起こることがある。
すいません。力尽きました。今日はこんだけ。