読まんのに書くな その2

 さて、おたまじゃくし君のつづきと行くか。前回はサンスクリット語パーリ語借用語だけで力尽きたので今回は英語の借用語をご紹介しようと思う。ただその前に非常に「役に立つ」であろう言葉をひとつご紹介しておこう。

 ประโยชน์

 最後の「」の上におたまじゃくしが付いているので発音するのは「ประโยช」の部分だけ。これを「ประ」と「โยช」に分けて読むと、まず「ประ」は二重子音で「pra(プラ)」、「โยช」は「(頭子音の)y」+「(母音の)oo」+「(末子音の)t*1」で「yoot(ヨート)」なのであわせて「prayoot(プラヨート)」と読む。この言葉は非常によく目や耳にする言葉で「役に立つ」言葉なのでぜひ覚えていただきたい。

 では、これから英語からの借用語をいくつかあげてみたいと思う。ぜひ元の英語を想像してみてほしい。

 ฟิล์ม

 元の英語が何なのかは、それぞれの音をアルファベットで考えてみると分かる。頭子音が「f」で母音が「i」で、その後は「」が「l」で末子音が「m」なので全部合わせると「film」。そう。元の英語は「film(フィルム)」である。逆に言えば、英語の「film」をタイ語で表記しようとすると「ฟิล์ม」となるのである。ところがタイ語の子音には頭子音と末子音しかないので本来のタイ語では母音の「 ิ」の後に「」が付くことはありえない。そこで苦肉の策としておたまじゃくしを付けて「」は発音しないようにしている。ということで発音する部分だけを残すと「ฟิล์ม」は「ฟิม」となるので発音は「fim(フィム)」となる。

 กอล์ฟ

 これはどうだろう。さきほどと同じように考えると「ก」が「k」で「(母音の)อ」が「O(口にピンポン玉が入っている「オ」)」で「」が「l」で「」が「f」だから「kOlf」?そんな英語あったかな?いや実は上の「film」みたいにアルファベットで考えた時に全く同じになる言葉ばかりではないのだ。ちょっと想像力を働かせてみてほしい。「kOlf」に近い英語は?そう。「golf」である。そして、「กอล์ฟ」の場合は「」におたまじゃくしがついているので発音するのは「กอฟ」の部分だけ。ということで発音は「kOOf(コーフ)」となる。というのはタイ語の発音のルールとしては正しくない。よく考えてほしい。末子音の時は「ฟ」の音は「f」ではない。「p」である。つまり「kOOf(コーフ)」ではなく「kOOp(コープ)」なのである。ただしこれは本来のタイ語の発音のルールにもとづけば、の話である。というのは、英語の借用語の場合はどちらかと言うと元の英語の発音の影響を受けた発音になるので実際にタイ人が発音する時にはやはり「kOOf(コーフ)」に近い音になる。実は英語の借用語の場合はこのように例外的な発音をすることが少なくない。

 โชว์

 この言葉をアルファベットで表記するとずばり「choow」となるのだが、元の英語が分かるだろうか。実はこれは「show」の借用語なのだが、タイ語には英語の「sh」にあたる音がないので代わりに「ch(ช)」の音を当てているのである。で、この「โชว์」の場合は「」におたまじゃくしが付いているので発音するのは「โช」の部分だけ。ということは発音は「choo(チョー)」となる。ただ、カタカナでは「チョー」と書いているが実際に耳に聞こえる音は「ショー」に近い音であり日本人にも違和感はない。違うのは日本語の場合は「ショー」は名詞として使うがタイ語の「โชว์」は動詞として使うことが多い。

 แคร์

 この単語の元の英語は何であろうか。とりあえず先に発音を確かめてみよう。「」におたまじゃくしがついているので発音するのは「แค」だけ。ということは発音は「kEE(ケー)」である。実は元の英語は「care」で、意味もそのまま「care」で使われている。タイの若者(と言うか30代ぐらいなら使う人も少ないないと思うが)はやたらこの言葉を使いたがるがぼくははっきり言ってこの言葉を使うのは嫌いである。なぜならタイ語にはちゃんと「care」にあたる言葉があるからである。要は日本語でやたら横文字を使うのが気に入らないのと同じ心理なのだが、タイ語に関してはぼくはタイ人以上に保守的であると自負している。

 他にも「beer」や「form」など英語の借用語でおたまじゃくしのついている言葉はけっこうあるので興味のある人は調べてみてほしい。

*1:「ช」は末子音の時は「ด」と同じ音