きっかけは何だったのか
「なぜタイ語を勉強しようと思ったのか」
こういうことを聞かれることが少なくないが、この質問をされるたびにいつもきまりの悪い思いをする。自分でも明確な答えが分からないからだ。
ただ、ひとつだけ言えることは、中途半端ではなく最後までやり通したいと思っていたこと、言いかえれば「モノにしたい」と思っていたことである。
それは、これまでの自分の人生では何ひとつとして最後までやり通したと思えたことがなかったからであり、死ぬまでになにかひとつぐらいはやり通したと思えるものがほしかったから、つまり、自分の中で達成感を得たかったからなのだと思う。
翻訳をしようと思ったのも結局はその延長線上で、タイ語をやるからにはそれで食っていけるぐらいになりたいと思ったのがおそらくきっかけだったのだろうと思う。「思う」というのは、自分でもはっきりと覚えていないからである。
そこで、6年と数ヶ月前にはそんなことを考えていたと思われる自分が、曲がりなりにも翻訳を生業とするようになるに至ったこれまでの経緯をまずは振り返っていくことにする。