「おまかせ(Omakase)」という日本語について

「おまかせ」という日本語があります。他者(相手)に何かを任せるという意味合いで使う言葉で、本来は幅広い意味を持つ言葉です。ただし、「おまかせ」という言葉を耳にして、料理、中でも特に日本料理をイメージする人は少なくないと思います。

 

ちなみに、「おまかせ」の意味は、辞書(デジタル大辞泉)には「物事の判断や処理などを他人に任せること。特に、料理屋で料理の内容を店に一任すること。」と書かれています。

 

この「おまかせ(Omakase)」という日本語ですが、タイの料理や料理店に関するテレビ番組やYouTubeで耳にすることがかなり増えてきました。このような言葉をタイ語の番組で頻繁に耳にするということは、それだけタイにおいて日本料理が浸透しているという証拠であり、おそらく、アメリカなど日本料理の店が数多くある国でも、“Omakase”という日本語は使われているのではないかと思います。

 

ただし、いくらタイにおいて日本料理が浸透している、あるいは、日本料理の認知度が高くなったとは言っても、“Omakase”という言葉を知っているタイ人は、割合としてはまだ少数ではないかと思います。また、 “Omakase”という日本語の元々の意味を知っているタイ人は、日本語にかなり精通したタイ人以外はほとんどいないと思います。

 

そう考えると、日本語は知らないけれども、日本料理のことは比較的よく知っているようなタイ人が“Omakase”という言葉を聞いた時の感覚を想像してみると、例えば、(意味は違いますが)日本人が「アラカルト(à la carte)」という言葉を耳にした時の感覚に近いものがあるかもしれません。ただ、言葉の認知度としては、日本人にとっての「アラカルト」のほうが、タイ人にとっての“Omakase”よりも随分高いとは思います。

 

ということで、日本料理において「おまかせ」という日本語は、現地の言葉に訳されることなくそのまま“Omakase”として使われているわけですが、では、“Omakase”という言葉をタイ語に訳すと何と言うのかを調べてみたところ、これだという定訳はないはずですが、“ตามใจเชฟ”という言葉が“Omakase”の訳語として比較的よく使われているようです。

 

この言葉は“ตามใจ”と“เชฟ”という2つの要素から成り立つ言葉で、まず、“เชฟ”はいわゆる外来語で、つまり、外国語(chef)を音訳した言葉であり、日本語で言う「シェフ」と同じ感覚です。ただし、日本語の「シェフ」が一般的には外国料理の「料理人」を指すのに対して、タイ語の“เชฟ”は、日本料理も含めた全ての国の料理の料理人を指す言葉です。しかも、感覚としては、ある程度きちんとした格式の高いレストラン(料理店)の料理人に使われる言葉です。ですから、日本料理の店でも、例えば、それなりに値が張る寿司屋の板前さんや和食の料理人などもタイではみな“เชฟ(chef)”と呼ぶのですが、この言い方は日本人としてはどうしても違和感があります。

 

次に、“ตามใจ”という言葉ですが、直訳すれば「心のままに」といったところですが、「おまかせ」の文脈で考えると、「思うように、思いのままに」といった意味になるでしょうか。ですから、“ตามใจ(思うように)” と“เชฟ(料理人)”で「料理人の思うように(作る料理)」といった意味合いになります。

 

これを実際に“Omakase”という言葉を使う場面でのニュアンスとして考えてみると、「料理の内容は料理人さんにお任せしますから、あなたが思うように作って下さい」といったところになるでしょうか。

 

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