日本で何をする?(その六)

 これまでの通訳の事前勉強と言えば、本番で使われるであろう言葉を調べておくということが中心であった。つまり、例えば日本語の資料があって、それに出てくる言葉の中でタイ語で何と言うのか分からない言葉を事前に調べておくのである。

 こういった言葉は中には手持ちの辞書だけで調べのつくものもあるが、大半の言葉は辞書には載っていない。こういった言葉は専門用語だったりその会社で使われている特殊な用語だったりすることが多いからである。では、辞書に載っていない言葉はどうやって調べるのかというと、ぼくの場合は基本的にウェブで検索している。そして、検索に使うサイトはグーグルが基本である。では、グーグルでどうやって調べるのかと言えば、まずその日本語の英語訳を英辞郎で調べ、その英語訳をグーグルのタイ語版で検索する。ただし、そのまま検索しても英語のサイトしかヒットしないので、タイ語のページ(หน้าที่เป็นภาษาไทย)なりタイ国のページ(หน้าของ ประเทศไทย)なりを選択してから検索する。うまくいけばこれでその英語訳に対応するタイ語が見つかる場合がある。

 こうやって抽象的に説明しただけではおそらく分かりにくいと思うので、具体例をあげて説明してみよう。例えば、「熱間鍛造」という言葉がタイ語で何と言うのかを調べたいとする。まず、「熱間鍛造」を英辞郎で調べると「hot forging」という英語訳が出てくる。そこで次にこの「hot forging」をコピーしてグーグルのタイ語版に貼り付ける。そして、タイ語あるいはタイ国のページを選んで検索する。と言いたいところだが、これでは「hot」と「forging」のいずれかが含まれるサイトを全部拾ってしまうので、「hot forging」の前後に「”(何て言うか分からん)」を付ける。こうすれば「hot forging」という言葉を含むサイトだけを検索してくれる。そして、実際に検索してみると、2ページ目の8番目(2007年11月18日現在)に「การตีขึ้นรูปร้อน(Hot Forging)」という言葉が含まれたページが出てくる。これで「hot forging」はタイ語で「การตีขึ้นรูปร้อน」と言う「可能性がある」ということが分かる。ただし、これだけで「熱間鍛造」=「การตีขึ้นรูปร้อน」とするのは早計で、ぼくの場合は必ず何ページも検索してみて、訳語として一番多いものを選択するようにしている。実際、「hot forging」の場合は「การตีขึ้นรูปร้อน」以外にもいくつかのタイ語訳が出てくる。

 とまあ、このようなやり方で調べるのだが、この「hot forging」などは非常にすんなりいく例であり、実際はこんな簡単に調べられる単語ばかりではない。まず第一に英辞郎で調べる訳語に注意しなけばならない。この英訳が見当違いのものだとタイ語訳も見当違いのものになる。そもそも英辞郎で調べると複数の訳語が書いてあることが多く(「hot forging」などはある意味例外である)、そこからこれではないかと思うものを選択しなければならない。そして、適切であると思われる訳語を選択するにはやはり「熱間鍛造」という日本語の意味を調べなければならない。そうすると結局、グーグルの日本語版でまず「熱間鍛造」を検索してその意味を調べることから始めなければならない。(そして実はこの過程が事前勉強において重要である)

 このように検索して訳語を調べることも事前勉強では必要なのだが、中にはこのやり方ではタイ語訳が調べられない言葉(例えば、その会社だけであるいはその業界だけで使われているような特殊な用語など)も少なくないし、そもそも全ての言葉をこのやり方で調べようと思うと非常に時間がかかる*1。そして、グーグルなどでは調べようのない用語などをこのように検索して調べようとすることは時間のムダになる場合があり、通訳の仕事を何度もやっていくうちに、事前勉強では言葉を調べる以外にもっと大事なことがあるということが分かってきた。

 ということで、前振りが長くなりすぎてもう疲れたのでこの続きは次回に書くことにする。




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*1:翻訳の調べ作業も基本的にこのやり方なので翻訳の作業で一番時間がかかるのは実はこの部分である。