翻訳と通訳の共通点とは その3

 翻訳や通訳を仕事にされている方ならおそらくお分かりだと思うが、翻訳と通訳の3つ目の共通点は、その文章あるいは話に関する知識である。

 実は今ちょうど翻訳でも通訳でも製造業に関する内容のものをやっているのだが、翻訳にも通訳にも絶対に欠かせないのがこの知識というやつである。これはもう言語以前の問題で、その内容に関する知識が自分にほとんどない場合は、たとえそれが日本語であっても何を言っているのか「分からない」のである。逆にタイ語がぼくほどできない人であっても、その内容に関する知識がぼくよりもはるかにある人のほうが(つまりはその仕事を専門にやっているような人のほうが)よっぽど話の意味がよく分かるなんてということは、これまでの短い通訳の経験からもいやというほど思い知らされている。これは翻訳でも同じことで、たとえばぼくの場合は妻がタイ人なので、はたから見ると、分からないところは妻に聞けば分かるだろうなんて思われがちだが、実際にはそのようなことはあまりない。というのは、ぼくの翻訳する文書は工業に関するものも多く、そういう文書を文系出身のうちの妻が読んだってやはり分からないのである。それどころか普段からそういった文章を読んでいるぼくのほうが妻よりもよく知っているぐらいである。特にその時まさに翻訳している文書の内容などは、こちらは何度も何度も読み返しているので、だいたいぼくのほうが妻よりも意味が深く分かっており、実際には専門的な内容に関して妻に聞くなどということはほとんどない。だから結局知識の問題は言語以前の問題なのである。

 ということで、今のぼくのように多種多様な分野の翻訳をしている者にとっては多種多様な分野の知識が必要となるわけだが、正直言ってぼくにとってこれは少々、というよりもかなりつらいものがある。なにがつらいかというと自分にとって興味のない分野の勉強をしなければならないほどつらいことはない。例えば、今やっている通訳で言うと、大きく分けて機械と電気の2つの分野の話で、文系のぼくにはどっちも苦手なのだが、その中でも機械はまだ理解できるというか、多少は興味が持てるところがある。ところが電気はもう絶望的で、電気回路図とかそういう関係のものはどう考えても興味が持てない。そんなわけでそういった内容の通訳をするのはも非常に精神的にも苦痛である。ただし、これは翻訳にしても通訳にしてもそうだが、やはり仕事というのは生活がかかっているわけで、自分のやりたい分野だけを選べるような状況ではない。

 そういうわけで、将来的には翻訳の分野をしぼっていくのかどうか、今後とも翻訳と通訳を両立していくのかどうかといったあたりについては現在も非常に悩んでいる。

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