思い込みその2

 先日ネットのニュースで、現在東南アジアでデング熱が流行しているという記事を読んで、前にデング熱のことを調べたことがあったなあと思いだした。その時は妻が知り合いから、 “ส่าไข้”は日本語で何と言うのかという聞かれ、私が調べたのだ。この時はたしか冨田さんの辞書にデング熱と書いてあったので、それを妻の知り合いに教えたのだと記憶している。

 今回、デング熱という言葉がちょっと気になったので、あらためて調べてみると、どうもタイ語では“ส่าไข้”というのではないことが分かった。
 ある日タイ辞書には“ไข้เลือดออก”と書いてあり、ああそう言えばたしかそうだったような気もするなあと思ったのだが、私は基本的に辞書の訳語を信用しないので(翻訳の仕事をしていると自然とそういう癖がつく)、タイタイ辞書やネットで調べてみると、“ไข้เลือดออก”もどうもデング熱(dengue fever)とはイコールではないような感じなのである。

 私が調べた限りでは、タイタイ辞書では“ไข้เลือดออก”には“hemorrhagic fever”という訳語があてられており、これは日本語では「出血熱」というようである。なるほど、たしかにタイ語の字もそのまま「出血熱」。そして、日本語とタイ語の両方のグーグルで色々調べてみると、デング熱とは別に「デング出血熱(dengue hemorrhagic fever)」というのがあり、どうもこれが“ไข้เลือดออก(出血熱)”の一種であるらしいと分かった。タイ語のグーグルを見ても情報がまちまちでいまひとつすっきりしないのだが、総合的に考えると、“ไข้เลือดออก”≒「デング出血熱」というあたりでいいのかなと思う。

 では肝心のデング熱のほうはというと、なんのことはない“ไข้เด็งกี่(つづりはまちまち)”とネットでは書かれていた。ただ、正確には“ไข้เลือดออก”=「デング熱」ではないとしても、タイ語のグーグルを見る限り、タイ語のニュースなどはテング熱のことをおおむね“ไข้เลือดออก”と書いているようである。

 ところで肝心の思い込みの話だが、実を言うと、私は今回こうやってデング熱タイ語を調べるまで、日本語では「テング熱」というのだとずっと思い込んでいた。せめて「デンギ熱」という名称にしてくれればこんな勘違いはしなかったのだ、と自分の思い込みを日本語のカタカナ表記のせいにしておこう。