初めてのアテンド通訳(四日目つづき)

 2ヶ所目の工場に着くとまずは昼食。

 二重箱のなかなか豪華な弁当で、中には牛肉のステーキも入っていた。このツアー全体を通して感じたのだが、なかなか至れり尽くせりのおもてなしである。ただ、タイ人のひとりがステーキを指して「これは牛肉ですか」と聞いてきたので、話を聞いてみると牛肉は食べられないという。実は他にもまだ牛肉が食べられないというタイ人がいたのだがこれは宗教的な理由からではなく、ただ単に牛肉自体を普段から食べないので食べられないのである。たしかにぼくの知っている限りでも、タイでは牛肉を使った料理を食べることはあまり多くはないが、それでもこれは少し意外であった。

 昼食を取りしばらく休憩した後、午前中と同じようにまず担当の職員から会社の概要について説明を受けた。そしてやはり午前中と同じようにスクリーンに映し出された資料を見ながら説明を聞いたのだが、午前とひとつ違っていたのは資料が英語であったことである。タイ人にとっては日本語よりはこれのほうが数倍いいであろうし、担当者は日本語で説明するのでぼくのほうも特に問題はなかった。ただし、ひとつだけ問題があった。担当者の説明が午前中よりも分かりにくいのである。これはもちろんひとつには通訳であるぼく自身の知識が不足していることも原因のひとつではあるだろうが、それだけではなく説明の仕方自体が午前中と比べて分かりにくい。これについては説明を受けている時は分からなかったが、後になってなぜこの人の説明が分かりにくかったのかが分かった。というのも、会社概要の説明の時に「JDパワー」という言葉が出てきて、何のことか全く見当がつかなかったぼくは担当者に尋ねたのだが、結局はっきりした答えが返ってこなくて、後になって工場見学をした時に、もうひとりの担当者からJDパワーというのが顧客満足度を調査する会社のことだと聞いてやっと意味が分かったからである。つまり、最初の担当者はJDパワーが何のことであるか実は知らなかったのではないかとぼくは思っている。だから説明自体も何となく分かりにくかったのだと思う。

 工場見学も午前中と同じようにイヤーフォンを使って説明を受けたのだが、ここでもひとつ問題が発生した。何人かのイヤーフォンの調子が悪く、通訳の声が途切れ途切れになるのである。やはり説明の声が途切れ途切れになるのはいやだろうと思って、ぼくは途中でイヤーフォンを使うのをやめて地声での説明に切り替えたのだが、20人からが見学していて列が長くなっているので、地声ではいくら大声を出してもやはり後ろまでは声が通らないので、結局はあきらめてイヤーフォンを使うことにした。

 工場見学の説明を通訳していてあらためて実感したのが、やはり実物を見るのが一番、百聞は一見にしかずということである。というのも、担当者の説明の中で「シートカバー」という言葉が出てきて、はっきりとした物のイメージがわかなかったぼくはとりあえずそのまま「シートカバー」という言葉を使って通訳していたのだが、頭の中では「シートにかけるカバー」をイメージしていた。つまり、自動車のシート(座席)があって、そのシートの上にかける何らかのカバーみたいなものをイメージしていたのだが、実はそれが全くの勘違いであることが分かった。後から実物を見たからである。

 何のことはない。シートカバーというのは実はシートの骨組みにかぶせる布地のことだったのである。ぼくは「シート」と言うとどうしても車の座席そのもののことをイメージするし、それはそれで間違いではないのだが、ここで言う「シート」というのは金属の骨組み自体を指し、それに布(高級車であれば皮だが)のカバーをかけて初めていわゆる完成形の「シート」となるのである。

 ということで、ぼく自身もいろいろな意味で勉強になった工場見学が終わり、次は電気屋に向かった。

 これを初日の分から読んでいる人は、初日にも電気屋に行ったのになんでまた電気屋に行くのかと思うかもしれない。実はこれにはわけがある。というのも、初日は中国チームは夜の便で到着しているので、まだ電気屋に行っていないのである。ということでこれはある意味中国チームのためであると言ってもいい。とは言っても、タイ人もけっこう買い物していたが。

 それからぼくは最初は知らなかったのだが、外国人が10,001円以上の買い物をすると消費税は払わなくてもいいのである。まあ、これはある意味当たり前のことであり、タイでも指定の店であればVAT(付加価値税)が返ってくる。ただし、タイと違うのは日本では店で手続きをすれば消費税を引いた額を支払えばいい。ところがタイでは空港でVAT分を後から返してもらうという面倒なやり方をしている。

 そして、ここで1万円以上の買い物をする予定だという人がいたので、ぼくも免税の手続きに付き合ったのだが、中国チームも免税の手続きをしている人がけっこういてかなり時間がかかった。

 店での買い物を終えてホテルに戻り、ホテルで夕食を取り終わった時にはまだ7時を少し回ったところだった。次の日は1日京都観光で、ぼくがこういう通訳は初めてだということで京都観光にはバスガイドが付くということであったが、やはり自分でもある程度は下調べをしておきたいので、部屋のネットでじっくり調べようと思っていたのだが、もうすっかりリラックスモードのタイ人に通路でばったり出会うと、今から飲むからまた来ないかと誘われ、とりあえず後から行くと答えて部屋に戻った。ただ部屋に戻ってベッドに横になると眠くなってきて行くのが面倒になってきた。悪いけどやっぱり行くのをやめようかなあ、別にぼくが行かなくても彼らも気にはしないだろうと思っていると、部屋に電話がかかって来て、飲まないかと誘われたので、まあ1時間ぐらいならいいかということで飲みに行った。ちなみにこの時は前回の反省を踏まえてビールを買って行った。

 結局、彼らと1時間ほど飲んで、明日の準備をするからと言って先に失礼し、実際部屋に戻ってからネットで京都観光の情報を調べた。結局この日は寝たのが1時半ぐらいだった。



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