どうやって身に付けるのか

 「学校以外の時間の過ごし方が非常に重要になってくるということをぼくは学校に通っていたこの当時から感じていた」のは、他の生徒の様子を見てのことである。というのはつまり、学校で同じように月曜から金曜まで毎日4時間勉強していても人によって明らかに上達に差があったわけである。

 なぜ人によってこれほどまでに上達に差があるのか。もちろん様々な理由があるのだろうが、ひとつには、やはり学校が終わってからの時間の過ごし方が大きく関係していると思う。例えば、あるアメリカ人がタイ語学校で勉強しているとする。そのアメリカ人には家族がおり、学校が終わり家に帰ると基本的には英語しか使わない。仮にこのような状況であれば、なかなか上達しないだろう。やはり学校での4時間の勉強だけでは「身に付く」という段階にはなかなか達しない。そんな中で家に帰った後ほとんどタイ語を使う機会がなく、また翌日には新しい内容を学ぶ。そして新しい内容を学んだものの、学校以外の時間でほとんど使うことがないのでやはりそれが身に付かない。そしてまた次の日には新しい内容を学ぶ...。このようなサイクルで勉強していると消化不良になるのでなかなか上達しないのではないか。当時からぼくはそんなことを漠然と感じていた。実際、モジュール1だけで500を越える単語を勉強し、こんな調子で半年も勉強すれば相当な量の単語を勉強することになるわけであり、そしてその学んだ単語の大半が「身に付いている」状況であれば、やはりかなりのことを聞いたり話したりできるようになっている「はず」なのである。

 ただし、これを書いているぼく自身もちょっとすっきりしないものが実はある。というのは、学校で勉強した言葉を学校以外の時間で使うようにするとは言っても、やはりそれにも限界があるだろうし、勉強したフレーズにぴったりの状況にそうそういつもいつも出くわすとは思えない。現にぼく自身も学校で勉強した言葉を全て実際の生活の中で使うようにしていたかと聞かれればそんなことはない(もちろん「復習」は毎日していたが)。

 それに自分の経験から考えても、「勉強、勉強」ばかりでは、いくら確固たる目的があったとしてもやはりどうしてもマンネリ化してくるので、やはり「好きこそ物の上手なれ」の方向でタイ語を聞いたりしゃべったりする機会を作っていくことがいいのではないかと思う。タイ語のカラオケを歌うのもいいだろうし、タイ人と飲みにいくのもいいだろうし、タイ人の友人や恋人を作るのもいいだろう。とにかくなんでもいいのだが、「タイ語がうまくなりたい」のであれば、自然と続けられるというか続けたくなるような形で継続的にタイ語を聞いたり話したりする時間を作ることだ。

 ちなみにぼくの経験でこれは大いに役に立ったと思えるのは、タイのテレビドラマである。これはさすがにモジュール1や2の段階ではまだ見ていなかったが、ある程度タイ語の語彙が増えてきた段階からなんとなくタイのドラマを見るようになった。もちろんタイ語の勉強のためという意識でテレビを見ている部分もあったのだが、結局は面白いから見るようになって、ついにはドラマに「はまる」ようになった。ちなみにタイ語では「はまる」というのを「ติด (tit) 」と言う。これは日本の連ドラと同じで、面白くなると続きが見たくなるというやつである。実際ぼくはタイにいる間に本当に数え切れないほどのタイのドラマを見ることになるのだが、これはコミュニケーションとしてのタイ語能力を身に付ける上でかなり役に立ったと思う。