基本単語を身に付ける

 モジュール1ではまず基本的な単語や言い回しを勉強した。

 具体的に言えば、数字、人称代名詞、疑問詞、基本名詞、基本動詞、基本形容詞、時間、年月、曜日といったところだろうか。モジュール1、つまり一番初級のレベルの内容であるが、さすがに1ヶ月で80時間勉強するだけあって、その内容は決して少なくない。

 80時間と書いたが、それがどの程度の学習時間なのかを考えてみると、例えば、週2日1回2時間タイ語学校に通う人がいるとすると、その人が80時間勉強しようと思ったら5ヶ月近くかかることになる。だが、仮に会社で働いている人が学校に通ってタイ語を勉強しようとすれば、週2日の1回2時間でもけっこう大変なはずである。そう考えると一昨日の日記では「1日4時間、週5日間学校で勉強する程度ではまったく足りない」などと書いたが、一般的に考えれば、それでもかなり密度の濃い勉強だと言うことはできる。

 そんな密度の濃い内容なので、一番初級のレベルとは言ってもまったく初めてタイ語を勉強する人にとっては簡単ではない。実際、ぼくが一緒に勉強したクラスメートの中にもかなり苦労している人もいた。ぼく自身は、以前何度かこの日記に書いているように、学校が始まるまでに独学で文字の読み書きを勉強し、初心者にしては多少言葉を知っていたこともあって、このモジュール1の内容に苦労することはなく、理解できないということもなかったので楽しく勉強できる状況であった。逆に、タイ語はまったく初めてという状況であったらけっこう苦労していたかもしれない。というのも、ぼくはいったん理解するとそのあとはそれほど苦労しないのだが、理解するまでに時間がかかり、自分が納得しないと思考を先に進められないタイプだからだ。そのおかげで小学校の算数は途中からまったく理解できなくなり苦手科目であった。じゃあ、計算などが苦手かというとそろばんはけっこう得意だったし、今でも数学は好きである。そう考えると、ぼくにとっては学校が始まるまでにある程度じっくり勉強する時間があったのはラッキーだったと思う。

 そんなわけで、ぼくは特に苦労することもなく20日間のモジュール1の内容を終えることになるのだが、クラスメートのひとりだったイタリア人のシスター*1は結局もう一度このモジュール1の内容を勉強しなおすことにした。

 このシスターはおそらく年齢は50前ぐらいだったと思うのだが、おそらくタイ語の勉強は初めてだったのだろう。最初からかなり苦労していたのだが、上に書いたように自分が納得しないと思考を先に進められないぼくとしてはシスターの気持ちはよく分かった。と言うのも、この人はものすごくまじめな人で、おそらく感覚的に納得できない部分があるとひっかかってしまう人だったのではないかと思う。

 今考えてみると、ここでシスターがモジュール2に進まず、もう一度モジュール1をやり直すことにしたのはぼくは正解だったと思う。と言うのも、モジュール2では当然モジュール1の内容を理解しているという前提で授業が進められるので、モジュール1の内容を理解していないと結局モジュール2の内容も消化不良で終わってしまうからだ。そして、シスター自身もそのことがよく分かっていたのだろう。それに最初にも書いたが、一番初級のレベルとは言え、このモジュール1の内容はかなりのものである。どの程度のものかと言うと、このモジュール1の内容を全て理解できていれば、日常生活のことならたいがいのことは意思の疎通が図れるぐらいの内容ではあると思う。例えばぼくはタイ人の妻と暮らしているが、普段使う言葉なんていうのはほんとに限られた言葉で、そんなに難しい言葉なんて使ってはいないのだ。これは日本人同士でもそうだろうと思う。家族との会話でもそれほど難しい言葉は使ってないと思う。逆に言えば、普段使う言葉なんていうのは知れているので、タイ人の配偶者がいるからといって勝手にタイ語がうまくなるなんていうことは全くない。それどころか自分で普段から意識していないとそこそこのレベルで上達は止まってしまうだろう。

 これはぼくの憶測であり、まったく何の根拠もないのだが、タイに住んでいる日本人の中でもこのモジュール1の内容のタイ語をすべて十分に使いこなせる人というのはおそらく少数ではないかと思う。つまり、モジュール1の内容というのは、ぼくが勝手にそう思うぐらいの内容だということである。

*1:この学校は従来からキリスト教のミッショナリーの生徒が多い。