はじめての翻訳(その2)
翻訳した記事の説明を終えると、次は翻訳料の話になった。
翻訳料はどのくらい欲しいのかと聞かれたのだが、どのくらいと言われても正直いくらと言えばいいのか分からず答えあぐねていると、向こうから額を提示してきたので、それでこちらもOKした。
ちなみに、翻訳料と言えば、普通は1ページいくらとか何文字でいくらといった計算なのだが、この時は1時間でいくらというふうに提示された。ぼくもそうだが、実は向こうも翻訳料がいくらかかるものなのかよく分かっていなかったようである。
そして後日、翻訳の仕事を依頼されたので再びオフィスに向かう。オフィスで原稿を受け取り、翻訳するためにオフィスの近くにある国際交流基金の図書館へ行った。
今これを書いていて思い出そうとしているのだが、どうしても思い出せない。どうしてぼくはわざわざ図書館に行って翻訳をしたのか。とにかく図書館に行って渡された原稿の翻訳をした。
ちなみに翻訳するためになぜわざわざオフィスに出向いたかというと、当時ぼくが住んでいたアパートには自分の部屋に電話がなかったのである。あるのはアパートの内線電話だけである。ということはファックスで原稿を送ってもらうことはできない。そして電話がないということはメールで原稿を送ってもらうことも当然できない。というよりもそもそもこの当時ぼくはパソコンを持っていなかった。
そんなわけで図書館に行ったぼくは、パソコンもないので当然手書きで翻訳した。持っている辞書も1冊だけである。内容はタイ語のニュース記事で枚数は1枚だけであったが、今思うとこんな状況でよく翻訳できたなと思う。
そして翻訳が終わり、かかった時間を相手に告げ、翻訳料をもらったのだが、今考えても、まったく素人のぼくがたった1枚の原稿であれだけのお金をもらったのはやはりもらいすぎだったと思う。なにせたった1枚の原稿を翻訳するのに9時間近くかかったのだから。
しかし翻訳の仕事はこの1回きりで、その後この会社からは連絡がこなかった。
そう言えば、今思い出したが、最初はオフィスで翻訳していたのだが、夕方になりオフィスを閉めるということで、その後国際交流基金の図書館に行って翻訳の続きをしたのだ。
あとちょい。